本日は、このような名誉ある賞をいただき誠にありがとうございます。 私は桑沢を知る前に田中一光さんの天才的な仕事とそのお名前を知っておりました。そして、田中一光さんにデザインを教わりたいという気持で桑沢の授業を選びました。 また偶然にも私の卒業と同時に田中一光さんが独立して青山にデザイン室をつくり、私は最初のアシスタントとして勤めることができました。それ以来先生が亡くなるまで40年近くも一緒に仕事をすることになったわけです。 それだけでも奇跡的な因縁といえるでしょう。さらに不思議なことが起こりました。私が田中一光さんと仕事を始めた1963年に、竹中工務店のPR誌「approach」が創刊され、その表紙写真を石元泰博さんが撮ることになった（1973年以来）のです。田中一光さんのデザインと石元泰博さんの写真。その接点に立つデザインを日夜の仕事とした若い私の幸運と強運こそ、本日の賞が証明しているのだと感じています。もし私が桑沢を選ばなかったら。もし、私が田中さん、石元さんのお二人に出会わなかったら。私の現在も、デザインの仕事もなかったといえるでしょう。 そういう意味で、私を育ててくれた桑沢デザイン研究所とその後を見守ってくれた（今は亡き）恩師、田中さん石元さんにこの場を借りてお礼を申し上げたいと存じます。